倉庫会社への物流委託検討~移管の手順① 検討開始から倉庫決定まで
実際に倉庫会社への委託を検討する基準は、自社に適した物流委託倉庫の選定のポイントをご覧ください。
スムーズな物流業務委託をし、倉庫側から最大限の物流提案を引き出せるよう以下の手順にて進めましょう。
1. 自社商品の商流を再確認しましょう。
初めての取り引きの場合、私たち倉庫側では、どのように商品は作られどこから入庫し、どのような受注をされ、どこに商品をお届けするのか分からないものです。
倉庫へ委託したのちに、お打合せ時と実際の作業内容が違う、見積り項目に含まれておらず別請求をされたなどトラブルが起こることがあります。原因としては、荷主企業の委託検討者が自社商品の流れをご理解されておらず要件定義時に不足されている、または倉庫側営業担当者のヒアリング不足が挙げられます。
このようなトラブルを回避するためには、業務フロー図を作成することが双方で誤認を防ぐ効果を発揮します。
当社ではフロー図を作成されていない荷主様が大半ですが、煩雑な業務については、別途フロー図を作成しお打合せ時に確認するようにしております。
■業務フロー図を作成する。
業務フロー図には、下記要件を含みましょう。
✅ どこで商品は製造されるのか。
✅ どのような形態で入庫されるのか。
✅ 商品の製造ロット管理、製造日・賞味期限管理は必要か。
✅ どのような購入者へ販売し、受注データはどのような仕組みなのか。
✅ 販売管理は基幹システムを利用しているか、エクセル等の簡易的なシステムなのか。
✅ 基幹システムでは帳簿外在庫はないか。発送時の出荷指示データのアウトプット、出荷実績データのインプットが可能か。
✅ 物流倉庫拠点は複数の場合は、どのようなパターンをどの倉庫へ委託しているか。
✅ 納品時のルールはあるか。
✅ EC通販発送などの場合、返品率、住所不明などで返品があるか。返品の際の対応と返品商品の取り扱いについて。
✅ 委託販売などの場合、小売店や卸企業より返品はあるか。返品の際の対応と返品商品の取り扱いについて。
✅ その他、イレギュラー作業について。
■業務の簡素化が可能な項目はないか。
倉庫会社では、物流業務は「出来るだけシンプルな作業」「作業事故が起きない作業」が当然好まれます。
当然、シンプルになればなるほど物流スキルがいらずどこの倉庫でも可能なため、自社に適した倉庫の選択肢が増え、作業料金も割安の見積りが可能となるのではないでしょうか。
物流業務に付帯作業が増加すると業務時間だけでなく、膨大な管理工数が発生し、出荷の際の作業事故のリスクが上がる場合が想定されます。
【事例:ECモール通販発送】
EC通販事業者はECモール管理画面より出力できる納品書を同梱し発送していましたが、当社では納品書を同梱せず、商品のみを発送することを以下理由よりお勧めしました。
- 購入者様画面で納品書出力が可能
- 納品書を出力し同梱するという工程が増え、作業工数とコストが上がる。
- 配送会社送り状と納品書、商品の3点の確認が必要となり、送り状と納品書に入り繰りが発生した場合、個人情報流出となり大惨事に 発展する可能性がある。
EC通販事業者様の「サービス」が購入者の「サービスレベルup」に繋がっているとは考えづらく提案し、作業負担を減らすこととなりました。
2. 委託倉庫を選定しましょう。
■RPF(提案依頼書)または業務フローをまとめた資料を作成。
企業がどのようなことを求めているのか、資料にまとめ、RPF(提案依頼書)を作成しましょう。
作成時間が取れない、または急ぎの場合でも簡単な資料作成は不可欠です。
業務フロー図と新規商品でない場合でも、月別(または日別)の出荷実績データ、商品マスタデータなど用意は必要です。
機密事項が含まれている場合は、NDA(秘密保持契約)を締結しましょう。
■倉庫会社へ見積依頼をする。
倉庫会社の候補選択は、インターネットで検索、または一括見積りサイトを利用されることが一般的かと思います。
一括見積りサイト利用の場合は、サイト運営会社がRFPを作成する場合もあり、簡素化が期待できます。
しかし、私の倉庫側として一括見積りサイト利用の経験では、倉庫側のサイト運営会社への紹介料は安くはなく、物流費を見積り金額に反映せざる得ない場合があるように思いました。
一番良いのは、お知り合いの方より良い倉庫の紹介を受けることだと考えますが、いらっしゃらない場合は、インターネットでエリア、条件などで絞り込み、検索しましょう。
複数社に見積り依頼をし、比較は必ずしてください。
何よりも倉庫担当者と必ずお会いされ、相性の確認をされることが最も大切です。
次に必ず見積り書の提出期限を決め、メールやFAXでの見積り提出ではなく、直接お会いし見積り書の内容説明や別途提案書による改善提案を提出する業者の方が、良い傾向にあるかと思います。
■委託倉庫を選定し、決定通知をする。
将来性、事業展望、事業貢献度、コスト、担当者との相性など選定の判断材料はたくさんありますが、貴社課題に対する提案内容で判断するのが最も良いのではないかと考えます。
料金での検討は当然大切ですが、将来的な配送運賃や作業費の値上げのお話は、ガソリン代の値上がり、ドラックのドライバー不足、倉庫作業員の最低賃金の値上げ、人材派遣業でのスタッフの社会保険加入などと政治的経済的な情勢より必ず発生し避けることが今後できないのではないでしょうか。
長い目で見て、どこの倉庫会社と契約することが企業として良いのか熟考されることをお勧めします。